萩原芳樹のブログ
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漫才の基本である「かけ合い」が出来ないことを注意されてショックを覚えるらん子(もうネネから、らん子に呼び方を変えます)
楽屋にいた落語家の笑遊に、 「かけ合いて、どないしたら上手になれるんですか?」 と、相談してみるが、 「わしは落語家やがな。漫才さんのかけ合いなんかわかる訳ないがな」 と、相手にされない。 そんな会話を、こっそりと聞いていた男がいた。 お囃子の「千吉」である。 「うらやましいでんなぁ」 千吉が、らん子の傍にやって来る。 「何がですか?」 らん子が、余りにも傍に寄って来た千吉に聞くと、 「そやかて、いきなり舞台に出て拍手喝采を受けて、もうかけ合いのことで悩んではるんでっか」 実はこの千吉という男、今まで二度ほど漫才コンビを組んで舞台に立つチャンスがあったが、2回とも舞台に立つ寸前で相方に逃げられてしまったという不幸な男であった。 とりあえず三味線や太鼓が出来るので、裏方の「お囃子さん」として雇ってもらっている。 逃げられた2人の相方は、どちらも千吉が選んで来た男前だった。 実は、逃げられた理由というのが二人とも共通しているのだが、それはまた後で詳しくお話することにしよう。 下積み暮らしが続く千吉にとって、らん子の突然のデビュ-は、腹立たしいばかりの存在ではあったが、何を思ったのか、らん子に芸のアドバイスを始めた。 「かけ合いなんか何回も稽古するしかおませんがな」 「けど、その稽古をしてもらえんかったら?」 「稽古は一人でもできますがな」 「そうか・・・」 らん子は、そう言われて自分一人でも漫才の稽古をしてみようと思った。 「それよりも、あんさんの舞台ですけどな、袖で見てて思うたのですけど、顔ノリやらはったらどうですか」 「顔ノリ?」 らん子には聞いたことの用語であった。 千吉は続ける。 「舞台で『大きい顔して』て、言われますやろ。この時にこうやって顔で乗るんですわ。ヒェ~!と」 漫才のテクニックの一つに「乗り芸」というモノがある。 例えば、「あんたアホか?」 と言われて、 ツッコまずに「そうや、先祖代々のアホで親の仕事もアホ業やってた位やからな・・・そんな仕事あるかい!」 という奴である。(これは長ノリではあるが) 千吉の言う「顔ノリ」とは、そんな風に言葉でノリをせずに、顔の表情で乗る芸のことであった。 新喜劇のベテラン芸人さん達は、今でもよく使っているので注意して観ていただくとわかると思う。 自分のことをボロクソに言われた時、思いっきり息を吸い込んで顔を正面やや上に向けて「ヒェ~」と乗る芸である。 らん子は「顔ノリ」を何度も千吉に教えてもらい、やっと習得できた。 そして、ぴん子とぽん子が楽屋に戻って来た時、 「ぽん子さん、すんませんけど顔大きいなって、言うてくれますか」と。 「何やの?あんたいきなり」 「ええから、お願いしますわ」 「わかった。言うたら気がすむんやな。ほなら言うで。あんた顔大きいな」 そう言い終わった瞬間である。 らん子は、先程教わった「顔ノリ」をやって見せた。 「ヒェ~!」 ぽん子は目をまん丸にして、 「顔ノリやんか!あんたどこでそんな芸覚えたんや?」 「実はね・・・」 と、らん子がいきさつを語ろうすると、 「顔ノリなんか許さへんで。そんなくっさい芸」 ぴん子が冷たく強い口調で遮った。 「ええやんか。二代目らん子が初めて覚えた芸や」 と、ぽん子はかばうが、 「アカン!」と、ぴん子。 ぴん子は「こまどり娘」の舞台をいかに時代の先端を走っているかに見せようと常に工夫していた。 「顔ノリ」は、確かに昔から代々伝わる芸。 らん子がせっかく覚えた「顔ノリ」も認めようとはしなかった。 「それから、ぽん子。舞台に出る時、鼻毛書くのはやめてや!」 すでに化粧前でぽん子は、自分の顔に鼻毛を書こうとしていた。 「ええやんか。ウケるんやから」 「そんなんで笑い取りたないのや!」 笑いが素人のらん子にとっては、何が古くて新しいのか皆目理解できなかったが、漫才をやる以上は全てぴん子に従わなければならないと思っていた。 そんな所へ、ヘンリ-が現れた。 「ネネ、いつまでそんなことやってるねん。。ぼちぼち店に戻るで」 キャバレ-のステ-ジを放っぽらかして漫才をしているらん子のことを迎えに来たのである。 PR ![]() ![]() |
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