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萩原芳樹のブログ
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らん子は、自分が鍋を頭にかぶったことでヘンリ-が初めて笑ってくれたので嬉しかった。
しかし、ヘンリ-が出て行った後、頭にかぶった鍋を取ろうとしたが、取れなくなってしまったのである。
「エイッ!」と、力を入れても頭の鍋は取れない。

確かにヘンリ-を笑わせようとして、グイグイと深く鍋をかぶった。
だが、それが取れなくなるまでとは予想もしていなかった。
無理やり鍋を取ろうとすればする程、鍋は頭と益々一体化する始末である。
小さな穴に指を突っ込んでしまった人が抜けなくなる時、無理に力を入れて抜こうとすればする程抜けなくなる。
それと同じ状態になっていた。

らん子が必死に頭の鍋を取ろうとしていた時であった。
ノックの音がした。
「ハ-イ、どなた?」
「失礼させてもらうで」
訪問客は、おまんであった。
「何してんの?」
鍋をかぶった姿に当然おまんは驚く。

「これかぶったら取れんようになってしもうたんですわ」
「アホの子供やないのやから。鍋かぶって取れんて。あんたアホか?」
「アホです・・。けど、鍋かぶったら、ヘンリ-初めて笑うてくれたんです」
「ホンマにアホやなぁ。宿なしのヘンリ-連れて来て面倒見てるやなんて」
「それより、おまん姉さん突然どうされたのですか?」
「話は後や。それよりその頭の鍋を取らんことには」

おまんは千吉から、コンビ解消を告げられて行方知れずになったままであった。
そんなおまんが何故突然らん子の部屋に現れたのか。
そんな話よりも先に、らん子の頭の鍋を取る作業が始まった。

まずは力一杯に頭の鍋を取ろうとしたが無理であった。
「あんた、すりこぎか何かないか」
「ハイ、そこに」
おまんは、すりこぎを手にすると、らん子の頭の鍋の周辺をすりこぎで叩き始めた。
「痛い!何しはるんですか」
「海苔の瓶詰めでもな、こうやって叩いてから回すと開いたりするもんや」
「そんなアホな」
「そうや、あんた今から銭湯に行ってな、頭からお湯につかるんや。瓶詰めでも膨張させたらフタ開いたりするから」
「おまん姉さん、この鍋かぶったまま銭湯に行くんですか」

おまんが何とか鍋を取ろうと協力してはみるが無駄であったようだ。
「それよりも、おまん姉さんが私を訪ねて来てくださるて、どういうことなんですか?」
鍋をかぶった状態で、らん子はおまんのその後の身の上話を聞かせてもらうことになったのである。

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