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萩原芳樹のブログ
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玉出の喫茶店の常連客に、キャバレ-のホステスさんがいた。
「星さん」という女性で、九州なまりのある田舎者丸出しのホステスさんであった。

その星さんが、ある日のこと「今日は同伴出勤の日なんだけど、まだ同伴客が見つからないの。誰か同伴出勤してくれない?」と、言い出した。
喫茶店の客は、勿論誰もキャバレ-で遊べるような金銭の余裕はない。

「とんぺ-ちゃん、同伴して。お金はいらないから」
星さんは、飲み代は自分が持つからと、私に同伴出勤を依頼して来た。
聞けば、同伴日に休むとペナルティが大きく、それなら自腹で知り合いを同伴させた方がましらしい。

「いいですよ」
キャバレ-という場所にまだ一度も行ったことのなかった私は、即座にOKした。

「星さ~ん、僕も一緒に行ったらアカン?」
傍にいた三宅が、その話に食いついて来た。

結局あつかましくも、私と三宅の二人が同伴出勤としてキャバレ-に無料招待してもらうことになったのである。
「でも、ちゃんとした服装にしてよ」と、星さん。
私は部屋に帰ってス-ツに着替えることにした。
問題は三宅だった。
勿論ス-ツなんか持ってはいない。

「やっぱりあきらめろや」
私がそう言うと、
「とんぺ-のス-ツ貸してくれや」と。
仕方なく部屋に戻ってはみたものの、冬物のス-ツは一着しかなく、夏物しかなかった。
「それでええがな」と、三宅。

そして、三宅は真冬というのに、私の夏物ス-ツに身をまとい、皮靴も一足しかなかったので、足下は私の「バックスキン」でキャバレ-に向かった。(その頃の三宅は年中サンダルだった)

「その夏物ス-ツで行くつもり?」
星さんは、さすがに困った様子だったが、三宅が「キャバレ-や!キャバレ-や!」と、はしゃぐので嫌とは言えなかったのだろう。

そのキャバレ-は満員だった。
ホステスさんが何百人もいる。
ステ-ジでは、フルオ-ケストラが演奏している。
その前のフロア-では、ホステスと客がジルバを踊っていた。

すっかり浮かれ気分の三宅は、他のホステスさんと、出来もしないジルバを踊っていた。
場内は、夏服姿でデタラメなジルバを踊る三宅に、失笑があちこちで。
星さんは、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
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