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萩原芳樹のブログ
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寂しいライオンの「獅子の助」は、飼育係に一応聞いてみた。
「僕を象と一緒のオリにしてもらえませんかね?」と。

「バカタレ!」
飼育係の答えだった。

秘かに恋していたメスの象と一緒に暮らすなんぞは、所詮夢でしかなかったのだ。

それからは、また獅子の助はオリの中で寂しく暮らす日々が続いた。
動物園に来た人間どもは、口々に
「ライオンよ。恐ろしいわよ」と、言って見ている。
獅子の助は、ずっと「ふて寝」を決め込んでいた。

そんなある日のこと。
飼育係が突然現れて、
「おい、オマエの女房が来たぞ」と。

一匹のメスライオンが連れて来られた。
ノッシノッシと・・・。

獅子の助は、もはやメスの象に惚れてしまっている。
今更メスライオンを連れて来られても・・・。

オリに入って来たメスライオンは、堂々としていて大きかった。
そして、いきなりジワジワと、獅子の助に迫って来た。

獅子の助は、除けようとした。
が、すかさずメスライオンは、獅子の助に覆い被さって来た。

「おい!いきなり何をするんだ!」
獅子の助は、身動き取れない状態に。

すると、上になっているメスライオンが、こう呟いた。
「兄ちゃん!やっぱ兄ちゃんだね」
何と、そのメスライオンは、妹ライオンだったのである。

「兄ちゃんのこと、心配してた。だから、私わざと捕まって兄ちゃんに遭いたいと思って・・・。けど、こんなに偶然にすんなり遭えるなんて」

獅子の助は、故郷の妹に再会出来たことに涙した。
しかし、勢い余って、妹と肉体関係を持ってしまったのであった。

獅子の助は、本当にダメなバカライオンである。
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そのライオンは「獅子の助」と名付けられていた。
ここの動物園に連れて来られて3年になる。

「退屈だなぁ。毎日狭いオリの中で何もすることがない」
ライオンは故郷のサバンナを思い出していた。

サバンナの広い大地で毎日走り回った日々が懐かしい。
しかし、エサを手に入れることが苦手で、いつも妹ライオンが仕留めたエサのお裾分けにあずかっていた。

「獅子の助」は、ドン臭い上、気弱なライオンなのである。
そのドン臭さゆえ、人間の簡単な罠にひっかかってしまった。

日本に連れて来られて、サ-カス団に入れられた。
でも気弱なので、どうしても「火の輪くぐり」をする勇気がない。

毎日ムチでしばかれたが、全くダメ状態。
困り果てたサ-カス団は、「獅子の助」を動物園に売った。

「何が『獅子の助』だよ。俺は日本生まれじゃないぞ。勝手にこんな名前をつけやがって」
内心ムカつくことだらけだったが、暴れでもしたら、ひどい目にあうことはわかっているので、オリの中でおとなしくしているしかなかった。

「恋がしたいなぁ」
故郷のサバンナには、片思いのメスライオンがいた。
しかし、告白や行動に出る勇気もなかった。
夜、寝ているところを襲おうとまで思ったことがあった。
が、恋しているメスライオンは大きくて、抵抗されるどころか、逆に噛み殺されるのでは・・・という恐怖心から何もできなかった。
「獅子の助」は童貞であった。
「このままオリの中で、しかも童貞で死んで行くのか・・・」
「獅子の助」は涙しながら眠る日も多かった。

ライオンのオリの向かいに、象のオリがあった。
つい先日、巨大なメスのアフリカ象が連れて来られていた。
毎日、象の姿を見て暮らす日々。
そのうち、メスの象に自分が惚れてしまっていることに気付いた。

「あの象と、一緒のオリにしてもらえないかなぁ」
獅子の助は、無理とはわかっていても、メス象と一緒に暮らす夢を見始めていた。

「ライオンと象が恋をして、赤ちゃんが生まれる。これは恐ろしい新種の猛獣が誕生するぞ。そうそう、名前は『ライオンだぞう』だ。うん、これは強そうだ」


*もう20年以上昔に書いた物語です。さて、この後、ライオンの獅子の助は童貞とサヨナラする日がやって来ます。続きはまた後程。



昨日、自宅の裏庭が余りにも草まみれなので、草むしりをすることに。
この夏、お芝居の稽古やらで、裏庭を放ったらかしにしていたので、草ボウボウの状態になっていた。

しかし、作業を始めると、草陰に潜んでいた奴等が慌てて逃げ出し始めた。
この季節「リ~ンリ~ン」と、いい声で鳴いてくれる鈴虫だ。
その数や、中途半端ではなく、50匹以上。

私が草むしりをすると、鈴虫達は、草の生えている方に逃げて行く。
でも、その逃げ場だった草も、私はやがてはむしってしまう。

鈴虫達は、私にどんどん追い込まれる始末。
最終的に、裏庭の草むしりを終えた段階で、鈴虫達は行く場もなくなり、庭の白い壁を団体で登ろうとしていた。

「ゴメンよ。鈴虫さん達。君達の暮らしを守るよりも、私はきれいな庭を選んでしまったんだ。本当にゴメンよ」
そんなことを呟きながら・・・。

おかげで、毎夜聞こえていた「リ~ンリ~ン」という鈴虫の声が、昨夜から聞こえなくなってしまった。
当たり前の話ですよね。

今日は、一寸方向性を変えて「ドキュメント鈴虫」の単なる報告でした。
「さぁ食べるんだ!お腹が空いているだろう」
老人は、嫌がる虎の口の中に、自分の左腕をねじ込んだ。

それから暫くして、老人と虎は平穏な日々を送っていた。
勿論、老人の左手は無くなっている。

保険に入っていたのだ。
老人は、左腕を無くしたことで多額の保険金を受け取り、また虎との暮らしを続けることができた。

しかし、その保険金も、やがて底をつく日が来る。
老人は、今度は右手を無理やり食べさせた。
そして、また保険金暮らし。

そんなこんなで結局、両手両足をも無くしてしまうことになる老人。
ついに最後の時が来た。

「お腹が空いているだろう? さぁ喰え!」
老人はダルマになっていた。
「こんなになったけどな、オマエと出逢って俺の老後は、それなりに楽しかった。感謝してるよ。有り難う!さぁ喰うんだ!」
虎は泣いていた。
老人も泣いていた。

そんなことがあってから何日か経ってのこと。
一人の女性が、老人のアパ-トを訪ねて来た。

「山田さ~ん! お父さんの死亡保険が下りますが、手続きをお願いします」
と、鍵のかかっていない扉を開けて、ビックリ仰天。

そこには、虎が厳粛な顔でペコタンと座っていた。
       ~完~

もう20年以上も前のラジオドラマを思い出して、あらすじのみを書いてみました。
今思えば、随分稚拙な物語ですよね。

次からは、もっとホンワカした「動物モノ」を思い出して書くことにします。
その老人と、虎との生活は続いた。
足の悪い虎は、部屋に座り込んだまま。
老人がエサを買って来ては、虎に与える日々が続く。

虎はどんどん成長して行った。
そして2メ-トルもの虎に成長した。
老人は、狭い一間のアパ-トで、成長した虎と、雑魚寝をする暮らしとなる。

しかし、困ったことが起こり始めていた。
老人の年金では、虎のエサ代が足りなくなって来たのである。

老人は、有り金をはたいて虎の食事を買った。
でも、虎はまだ物足りない様子。

そんなある夜のことだった。
夜中に虎のお腹が「グ-」と、鳴った音に老人は目覚めた。
虎は空腹のせいか、息使いも荒い。
「そうか、お腹が空いているんだな。でも、もう食料を買う金もないんだ」と、老人。
虎は、老人を見つめたまま。

老人が突然叫んだ。
「そうだ!この俺を食べれば良い!さぁ喰え!」
と、老人は左腕を虎の目の前に差し出した。

虎は、さすがに後ずさりした。
老人は、更に虎に近付き、「さぁ喰うんだよ!こんな俺の片手なんか、なくなってもいい。オマエが満腹になって幸せな顔をしてくれることが、俺にとっても一番の幸せなんだよ!さぁ喰え!」

虎の目は、涙でうるんでいた。
しかし、虎が次にした行動とは・・・。
      ~続く~

では、動物や虫を擬人法で書いていたラジオドラマを思い出して、綴って行くことにします。

まずは「老人の拾いモノ」という作品。
これは、取り立てて擬人法でもないのですが・・・。

(物語)
その老人は、60歳を越えていた。
定年退職した後、僅かの年金暮らしをしている。
家族は誰もいない。
子供のいない夫婦暮らしの末、妻を3年前に亡くしての一人暮らし。
8畳一間のアパ-ト暮らしであった。

これといった趣味もなく、友達もいない。
老人は毎日することがなかった。
せいぜい近くの川べりを散歩することだけが生きがい。

そんなある日のこと、川べりを散歩していると、一匹の子猫を発見する。
子猫は河岸の草むらに座り込んだままだった。
どうも、足が不自由なようであった。

老人は、子猫に優しく語りかけようとしたが、何を言っていいのやらわからない。
その足の不自由な子猫と別れて帰宅する。

夜になった。
老人は、いつものように「茶漬け」と「漬け物」で夕食を終えると、急に子猫のことが気になり始めた。

散歩コ-スの川べりまで早足で向かった。

子猫は夕方と、同じ格好で座ったままだった。
「かわいそうに、交通事故に遭ったのか?飼い主も、さぞ心配しているだろうに」
老人は、そう思ったが、飼い主を見つけることも至難の業と思い、とりあえずは、その子猫を自分のアパ-トに連れて帰ることにした。

子猫はお腹が空いていたようだった。
猫用のペットフ-ドを買って来て与えると、凄い勢いでパクついていた。

翌朝から、老人に笑顔が蘇って来ていた。
妻を亡くしてから3年。老人は、笑ったことがなかったのだ。
子猫は、老人になついた。

こうして三ヶ月の月日が流れた。
ひとりぼっちの老人は、子猫の成長が何よりの楽しみであった。
しかし、その成長ぶりが普通ではなかった。
拾って来た時は、ごくごく小さな子猫であったのに、三ヶ月した今、70センチもの体長になっていた。
普通の猫よりも大きく成長してしまったのである。

老人は、動物病院に行った。
「この子、何という種類の猫なのですかね?余り成長が凄すぎるもんで」
すると獣医は、こう答えた。
「ネコ?違いますよ。これは虎ですよ」
「ハァ?虎?」

老人が拾って来たのは、なんと虎の赤ちゃんだったのである。

それからというもの、老人と虎は8畳一間で生活を送る日々となった。
アパ-トで動物を飼うことは禁止されている。
幸い足の悪い虎は、部屋に常に座り込んだまま。
老人が、エサを買って来ては、虎に与える。

虎は老人の語りかける言葉が理解できるのか、目をウルウルさせてばかり。

でもこの後、とんでもないことが起こるのです。

               ~続く~





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