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萩原芳樹のブログ
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ヨンちゃんが町の道場に通い始めてすぐのこと、一つ年上の「甲田先輩」が、「組み手をやろう」と、誘ってくれた。

甲田先輩は、サウスポ-なので組み手は逆であったが、互いに組み合った時こんなことをヨンちゃんにささやいて来た。
「背負い投げしてみ。俺、やられたるから」

ヨンちゃんが習い始めたばかりの背負い投げをしてみた。
すると、ヨンちゃんの投げた勢いよりも凄くぶっ飛んで行った甲田先輩。

そして、倒れたまま動かなくなってしまったのである。
「大丈夫ですか?」
心配したヨンちゃんが近寄ると、甲田先輩はヨロヨロと立ち上がる。

が、またヘナヘナと倒れ込んでしまう。
「甲田さん、ホントに大丈夫ですか?」
また声をかけると、立ち上がる甲田先輩。
今度は片足を引きずって歩き出す。

「足、どうかなったんですか?」
ヨンちゃんがまた心配して言うと、その引きずった足のヒザをポンと叩いてスキップを始めた。
(その頃流行り始めた「平参平」のギャグである)
甲田先輩の動きは見事なコメディアンそのもの。
寛平さんの動きを想像してもらえば良い。

ヨンちゃんはケラケラと笑った。
甲田先輩は、その反応に満足そうであった。

当時の小学生で、ダジャレを言ったり、TVのギャグをマネして言う奴は沢山いた。
しかし、動きで笑いを取る小学生をヨンちゃんは初めて見たのであった。

ある意味、衝撃であった。
それからというもの、道場に行けば甲田先輩にまとわりつくヨンちゃん。
甲田先輩の動き芸を盗みたかった。
しかし・・・。

甲田先輩は、間もなく道場には二度と顔を出さなくなってしまった。
噂に聞けば、私立中学の受験が迫り、柔道どころではなくなっているとか。

その後、ヨンちゃんは甲田先輩と会う機会はなくなった。
でも、ヨンちゃんはクラスで甲田先輩の動き芸をパクッて見せては笑いを取るようになっていた。
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