萩原芳樹のブログ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ぽん子が、そそくさと身支度をして楽屋から出て行こうとする。
「ぽん子さん、どこへ行くんですか?夜の舞台、もうすぐ出番ですよ」 らん子が止めようとしたが、 「ゴメン。うち昨夜ヘンリ-とな・・・つまり男と女の関係になってしもたんや」 「ぽん子さんが?ヘンリ-と?」 「あんたにフラれて、さぞ寂しかったのやろうな。私を抱きたいとホテルに誘われて・・ホンマにゴメンな」 「そんなんええですやん。私とあいつとは、もう終わってるのやし」 「それから、ゴメンついでにもう一つ」 「何ですか?」 「今、ヘンリ-から、今夜キャバレ-で歌わへんかという誘いがあってな。うち歌うて来ようと思うてるねん」 「夜のここの舞台は?」 「ぴん子がいてないのやから、どうせ無理やんか」 「そやけど、舞台は二人ででも・・」 「アカン!ぴん子抜きでは無理やって。あんたとでは漫才のかけ合いも出来んやんか」 そう言い残して、ぽん子は出て行こうとする。 まるで明るい未来に向かっての旅立ちのようにも、らん子は見えた。 「ぽん子さん、嬉しそうですね・・・」 「うちなぁ、ホンマは歌手に憧れてたんよ。15歳の時、田舎の岡山出る時も歌手になりたいと思うてた。そやけど、この顔とこの体型やろ。お笑いに進むしかないと諦めてた」 「けど、歌手というても、場所はキャバレ-ですよ」 「どこでもええやん。傍にはギタ-弾いてるヘンリ-がいてくれることやし」 らん子は、嬉しそうなぽん子の姿を見て、哀さを感じた。 「ヘンリ-の奴、またいい加減なことをして、男に未熟で純粋なぽん子さんを騙して」 別れたヘンリ-のことを考えるだけで腹が立って来た。 一年間ヘンリ-と同棲暮らしをしたらん子は、ヘンリ-の浮気グセに何度も泣かされたのは事実であった。 フラフラと、酔っぱらいが千鳥足で、あちこちの飲み屋に顔を出すような感覚で、ヘンリ-は女をつまみ喰いしていたのである。 「ぽん子さん、ヘンリ-のことなんか信用したらアカン!二人でこまどり娘、続けましょうよ」 去って行くぽん子の背中越しに、そう叫んでみたが無理であった。 「寂しいヘンリ-の気持ちを慰められるのは、私しかいてないんよ」 「ぽん子さん・・・」 「それから私、もうここに戻って来んかもわからんけど」 「戻って来ないて?」 「ぴん子も一人で東京に行ってしもうたし、こまどりは解散・・かな」 「ちょっと待ってぬ解散て、そんなアホな!」 一人楽屋に取り残されたらん子は、泣き崩れた。 キャバレ-歌手から、女芸人の道を選び、ヘンリ-とも別れてスタ-トした芸人暮らしであった。 それが、こんなにいとも簡単に、崩壊してしまう等とは予想もしていなかった出来事である。 目の前が真っ暗になった。 と、その時、おまんがやって来た。 「二代目はん、一人で何してますのや?」 らん子には、もはやすがる相談相手もいない。 そこで、おまんに身の上話を相談したのが大失敗となる訳である。 PR |
カレンダー
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
萩原芳樹
性別:
非公開
ブログ内検索
アーカイブ
P R
カウンター
アクセス解析
アクセス解析
アクセス解析
カウンター
忍者アナライズ
忍者アナライズ
カウンター
|