萩原芳樹のブログ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「松の木、甚兵衛」は、ついにトイレットペ-パ-に、その姿を変えられてしまった。
幼い頃から、大好きだった山の婆ちゃんに「木が紙にされたら、それが最後だということよ」 と、よく教えられたので、覚悟は出来ていた。 甚兵衛のトイレットペ-パ-は、山の手の高級住宅の家に買われて行った。 納戸に積み上げられたトイレットペ-パ-の山の一角となり、自分の最期を待つ甚兵衛。 そして、ついに最後の時が来た。 見るからに上品な奥さんが、甚兵衛をトイレに運んで行ってセットした。 「ああ、僕の一生もこれで終わりか・・・」と、思っていた時である。 「甚兵衛!甚兵衛じゃないか」 どこかから、声が聞こえて来た。 「俺だよ。杉の木弥太郎だよ。覚えているだろう?ホラ、故郷の山で一緒だった・・・」 「杉の木弥太郎君?」 甚兵衛は、その声の主を探した。 「ここだよ、ここ」 なんと、杉の木弥太郎は、トイレの柱になっていた。 「弥太郎君・・・こんな所に。立派な家の大黒柱になったのではなかったの?」 「ウウン、最初はそのつもりだったらしいけど、僕よりももっと立派な木があって、そいつを大黒柱に使うことになり、僕はこのザマさ」 「そうだったのか・・・」 「僕さ、人間社会でもっとチヤホヤされると勝手に思っていたけど、結局は人間のお尻ばかり見せられてる毎日。山を出て、人間のお尻ばかりを見せられて一生終わるのかと思ったら、情けなくってね。こんなことが、あと何年続くんだろうね。甚兵衛くん、君は今まで何してたの?」 甚兵衛は、杉の木弥太郎に、これまでのことを全て話した。 「エロ本」になったこと。 新聞になって、人間のことを、もっと深く知ったこと等々。 「へぇ~。甚兵衛くんがうらやましいなぁ。そんな風に人間社会を色々と見て来られて」 「そうかなぁ。でも、僕はもうおしまいだよ。こんなことなら、山で一生素朴な松の木でいた方が良かったなぁと思う時もあるよ」 「いや違う!君は人間社会の裏を散々見れて来られた。うらやましい限りだよ。僕なんかな、こうやってずと人間のお尻ばっかりを見せられて・・・」 そんな会話を続いているうちに、足音が近付いて来た。 「杉の木弥太郎くん、もう、お別れだね」 「甚兵衛くん・・・」 「弥太郎くん、君の言うように僕はやっぱり幸せだったのかも知れない。松の一生としては短かったけどね」 トイレのドアが開いた。 甚兵衛と弥太郎との会話は、そこで終わった。 トイレに入って来た主が、用をたしていた時、少し柱がきしんだような気がしたのは、気のせいだったのだろうか・・・。 ~完~ 今から30年も昔に構想した物語です。 当時、プロの作家でもなかった私が、何を考えてこんな物語を作ってしまったのでしょうかね・・・。 PR |
カレンダー
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
萩原芳樹
性別:
非公開
ブログ内検索
アーカイブ
P R
カウンター
アクセス解析
アクセス解析
アクセス解析
カウンター
忍者アナライズ
忍者アナライズ
カウンター
|