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萩原芳樹のブログ
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ヨンちゃは6年生になった。
学校も楽しく、柔道の方も充実していた。
甲田先輩こそ、いなくなってしまったが、「岩沢」という一つ年下の後輩が何かとヨンちゃんの子分のようにまとわりついて来た。

「岩沢」は、いつでも笑っているような顔をした少年。
ヨンちゃんが甲田先輩譲りの動き芸を見せると、顔をクシャクシャにして笑っていた。

ヨンちゃんの柔道の得意技は「巴投げ」であった。
しかし、この大技はなかなか決まらないもの。
練習では決まっても、いざ試合になって決まった試しがない。

ヨンちゃんは、岩沢にことごとく巴投げをかけた。
やられた岩沢は、またケラケラと笑っていた。

そんなある日のこと、「岩沢、俺は空気投げができるようになった。オマエにかけようと思う」と。
その頃、TVでは「姿三四郎」が人気で、空気投げなるモノの存在が少年柔道の間でも話題になった。

相手に手をかけずに倒すという「空気投げ」
実際そんな技は非現実的で、ありえない技なのだが、ゆえに憧れる。

ヨンちゃんが「空気投げ」を試みた。
見事に成功した。
岩沢は、手もかけていないのに、一回転して倒れたのである。
考えてみれば、岩沢という奴、そこまでよく付き合ってくれたものだと思う。

そんな人の良い岩沢だが、道場に来ていた中学生にバカにされるという事件があった。
いつもヨンちゃんの手下のような存在でケラケラ笑ってばかりいる岩沢。
なめられて当然だったのだろう。

が、岩沢がその時初めてキレた。
なんと中学生をボコボコに殴ってやっつけてしまったのである。
ヨンちゃんは、ただ見ているだけ。
驚いた。

道場でケンカは良くない。
ヨンちゃんは興奮冷めやらぬ岩沢に近づいて、こう言った。
「今日は、もう一緒に帰ろうや・・・。ところで、オマエとこの商売、確か運送屋やったな?」
いつも二人で会話しているやりとりである。
岩沢は、ニコリとして答えた。
「ウン、そうや」



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