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萩原芳樹のブログ
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楽屋に何喰わぬ顔で現れたぴん子。
「ぴん子ちゃん、もう東京に行く時間やで」
と、米沢マネ-ジャ-。
「ええっ?もう行くて、ぴん子あんたは自分一人だけ東京のTVが入ったこと知ってたんやな」
ぽん子が、かなり興奮気味に怒鳴った。
「ああ」
と、ぴん子はそっけない素振り。
「なんでそんな話を今まで黙ってたのや!」
ぽん子の怒りが続く。
「ゴメン、言いそびれてただけのことや」
「そんな大事なこと、言いそびれるて・・・」
楽屋に嫌~な空気が流れた。

新メンバ-に加わったらん子は、比較的冷静にその様子を見ていた。
こまどり娘もトリオ漫才とはいえ、話術やルックス、センスにおいても、全てぴん子が突出していることは理解していた。
舞台の漫才はチ-ムプレ-ではあるが、いざTV番組となると、使うTV局側は容赦ない。
速戦力となる芸人だけを使う。
そんなことも実は把握していたのであった。

昭和40年に始まった「東京お笑いブ-ム」だが、3年の間にブ-ムも陰りを見せ始めていた。
つまり、どんどん新人を抜擢してはスタ-街道を乗せていたのであるが、コマが足りなくなってしまったのである。
新しくTVに登場させる新人コンビがいなくなると、TV局側はコラボに走り始めた。
つまり、コンビを入れ替えては新鮮に見せて、何とか番組を乗り切ろうとしたのであった。

この現象は、それから数年後に関西で起こった「ヤングオ-オ-」ブ-ムや、後の「マンザイブ-ム」でも、やはり同じように「コラボ現象」にてブ-ムは終結してしまっている。

ぴん子が突然全国ネットの番組に呼ばれたのも、「コラボ番組」の一つのコマとして選ばれたのであった。
こまどり娘は、楽器を手にした若い3人の音曲漫才である。
東京のTV局からすると、音曲漫才はすでに時代遅れという判断。
そんな中で、笑いのセンスとルックスだけが買われて、ぴん子一人の東京進出となった訳である。

マネ-ジャ-の米沢が、ぴん子を新幹線に乗せる為に連れて行った。
残されたのは、らん子とぽん子。
「どないするねんな。次の舞台もあるっちゅうのに」
ぽん子が、楽屋にチョロチョロしていたゴキブリを思いっきり踏みつけて言った。
「ぴん子さんが留守の間は、二人で立派に舞台を務めましょ」
らん子は、そう返すしかなかった。

その時、楽屋の電話が鳴った。
らん子が電話に出る。
「もしもし・・・ああ、ぽん子さんですか。ちょっとお待ちください。ぽん子さん、男の人から電話」
「そう」
と、ぽん子は受話器を取ると、つい先程までとは別人のように変わり、
「うん!ええわ。すぐ行く!」
と、何やら上機嫌になっていた。

らん子には、わかっていた。
その電話の主がヘンリ-であることを。
「今の電話、ヘンリ-からやね?」
らん子が思い切って語りかけると、
「わかった?ウフフ・・・」
と、ぽん子は満面の笑顔である。

「崩れて行く」
らん子は直感で感じた。
こまどり娘に加入して、ひたすら女芸人の道を歩み始めた今、全てが崩れて行くような気がしたのであった。
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