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萩原芳樹のブログ
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ブロイラ-は、暫くの間、少年の歌に聴き入っていた。
と、その時である。
少年が振り向き、ブロイラ-の姿を発見してしまった。

「しまった!捕まって食べられる・・・」
ブロイラ-は、恐怖に怯えて固まったが、少年は何事もなかったかのように、また海を見つめて歌い続けた。

「こんな所で何をしてるの?」
ブロイラ-の方から、勇気を持って話しかけた。
少年は何も答えず、歌い続けるだけだった。

そして、歌い終わったその時、やおら語り始めた。
「僕は疲れた・・・。喰うか喰われるかの世界なんて嫌になったんだ」
「そう!まさにその通り!喰うか喰われるなんておかしいよ」
ブロイラ-の発したその言葉に、少年は満面の笑みを浮かべた。

ブロイラ-は、とりあえずは身に危険はないと察して、少年の横に歩み寄った。
少年とブロイラ-は、長い時間無言のまま、ただ海を見ていた。
そして、時折太陽を見上げる。
「あの大きな太陽があってこそ、この地球があり、地球があるから、人類や生物が生きていられると思うんだ」
「その通り!」
ブロイラ-は、少年の言葉に相づちを打ったが、正直少年の言いたいことがよく理解できていなかった。
「哲学者か、こいつは・・・。どう見ても、まだ小学4年生くらいの筈なのに」

「家出をして来たんだ僕・・・」
「家出って、家を飛び出して、この島へ?」
「ああ、よく海水浴に連れて行ってもらった島まで一人でゴムボ-トを漕いで行こうとしたんだけどね、流されてこの島まで来てしまったんだ」
少年は、家出した理由を語り始めた。

「全てが嫌だった。親は喰うか喰われるの社会で生きて行く為には、勉強を頑張るしかないと言うばかりだし、学校が終わると遊ぶ間もなく熟。熟では点取り虫の競争社会。せめて学校が楽しければ良かったんだけど、弱い者をみんなでよってたかってイジメルだけの、これも喰うか喰われるかの世界さ。全てがみんな嫌になっちゃったんだよ」

今度は、ブロイラ-の番だった。自分が閉鎖されたニワトリ小屋を脱出して、この島にたどり着いたことを少年に話した。

少年は、ケラケラと笑った。
「で、これからどうするの?」
ブロイラ-の、そんな問いに少年は何も答えず、また海を見つめ続けた。
ブロイラ-も、黙って海を見る。

少年は、重い口を開いた。
「わからない・・・。けど、こうしているのが快適。それだけ」
「そうたよね・・・」
また、少年とブロイラ-は、無言で海を見続けていた。
     ~続く~
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