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萩原芳樹のブログ
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ネネは、その場の勢いに任せて「二代目柳流亭らん子」を名乗ることになってしまった。

しかし、代演で舞台に立ってまだ三日目。
そんな大きな名前を継承すのに、漫才というモノが全くわかっていない。

ネタ合わせを頼んでやってもらえることになった。
「ほな、頭のフリから行くでぇ」
と、ぴん子が言うと、自分の頭を不二家のペコちゃん人形のように振り出すネネ。

「あんた何してんの?」
「いや、頭のフリを」
「頭のフリいうたら、最初の喋りっちゅうこっちゃ」
ぴん子は、頭を抱える。

「ほなかけ合い始めるで」
「かけ合いて、水の?」
「水のかけ合いして、どないすんねん!市民プ-ルで子供が遊んでるのやないのやから」
傍で一人デブのぽん子が、ケラケラ笑っている。
「オモロイな。これそのままネタに使おうか?」
「使われへん!」
何もわからず自然にボケるネネと、人ごとのように笑っているぽん子に、
ぴん子は一人いらだっていた。

「ええか、行くでぇ。寒くなりましたねぇ」
このセリフにネネとぽん子は、すかさず「合いの手」を打たなければならない。
「ハイハイ!」
「あんた、大きいねん!」
と、ぴん子は、すかさずネネに注意をする。
「顔が?」
「顔大きいのは、わかってんねや!声や、声!」

初心者のネネは、初めてのネタ合わせで、ことごとく注意された。
そもそも漫才という芸は、リズムが何よりも大切である。
「ネタフリ」と呼ばれる「筋運び」の段階では、ネタをふる立場の人間のセリフを相方が相づちを打つ。

この相づちの間が、一呼吸でも遅れると漫才は成立しない。
音楽のラップのように心地よく二人のかけ合いをすることで、お客さんは二人のリズムに巻き込まれて行く訳である。

「ミヤコ蝶々」さんが、「南都雄二」さんに漫才を教えた時、このかけ合いの稽古ばかりを随分とされたらしい。
そのやり方とは、ラジオでニュ-スを読んでいるアナウンサ-の声に、相づちを打たせることから始めたという。
その相づちも、相手の喋りのテンポに合わせながら、相づちで挟む言葉も、極力同じ言葉は避けるようにと。

作者の私も、「B&B」を結成した当時は、相方に同じ特訓をした。
私が新聞記事を読み、それに相づちを打たせる。
新聞を読むスピ-ドを速めたり遅くしたりしながら、二人のかけ合いのリズムを作るのである。

器用な人は、割合早くこの技を習得できるのだが、不器用でリズム感のない人間は、なかなかできない。
(B&Bは、これにかなり苦しんだ)

ネネは比較的器用な方であった。
さすが歌手なだけあって、かけ合いのリズムを掴むことはできた。

しかしである。
相づちを打つ顔を作りすぎであった。
「ネタフリ」というのは、喋りをリ-ドしている方に視線を集めなければならない。
なのに、ネネときたら、極力面白い顔を作って目立とうとするのであった。

「顔を作るな!」
また、ぴん子から叱られる。
「そんな顔されたら、客はあんたの顔ばっかり気になって話聞かんようになるやろ!」

ネネには、まだ注意されている意味が理解できないでいた。
「漫才やから、何でもオモロかったらええんと違うか」と。

いわゆるオチに対する伏線とかの意味が皆目わかっていなかったのである。
「あんたには、まだかけ合いは無理や。ぽん子と二人でやるから、あんたは黙って見てたら、それでええ」
ぴん子から、そんなことを言われてネネはショックであった。
「漫才を上手くなりたい。でもどうすれば良いのか・・・」

ネネが二代目柳流亭らん子となって、芸人の道を歩み始めた。

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