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萩原芳樹のブログ
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ぴん子は、東京のTVの仕事で連日のスケジュ-ルが埋まっているらしく、笑楽座には帰って来ない。
ぽん子も、ヘンリ-と同棲を始めて、キャバレ-歌手となり、寄席の舞台に戻る様子もなかった。

「こまどり娘」の笑楽座出番は、そんな訳で休演が続いていた。
らん子が、「ピン(一人)で舞台に立たせてください」と頼めば、それも可能な話ではあったが、一度ドン滑りの経験をしたらん子には、そんな自信もない。

陽の当たらないアパ-トで朝起きて、
「今日どうしようかな」
と、らん子は迷う。
でも、まだ「こまどり娘」は一応出番中になっているので、笑楽座の楽屋へと向かう。
ひょっとして、いなくなったぽん子や、ぴん子も戻って来て舞台を務められるのでは・・・というかすかな望みからであった。

とりあえずは楽屋の隅で一日中小さくなっているしかなかった。
「こまどり娘」の代演をしていた「おまん千吉」のコンビが舞台を終えて楽屋に戻って来た。
「二代目はん、そんな所で一人何してますのや?」
おまんが声をかけて来た。
「ぴん子ちゃんも、ぽん子もいてないというのに、ノコノコ毎日楽屋に現れてからに。そうやって、みんなから同情されようと思うてるのでしょ」
相方の千吉がきつい言葉を発した。
「違うんです」
らん子は、今の自分の気持ちを語ろうとしたが、相手が相手なので、やめることにした。
「こまどり娘」が休演となって、その仕事は全て「おまん千吉」にまわっている。
そんな相手に何を喋っても仕方がないと感じたからであった。

実際、昭和の時代に相方がいなくなって困り切った残された方の行動は、いろいろとあったようである。
らん子のように、本気でいつ戻って来るか知れない相方を楽屋で待つ芸人もいたようだが、逆に取り残された自分に同情を集める為に、自ら悲しそうな演技をしていた芸人もいたらしい。

つまり、コンビやトリオが分裂すると、誰に評が集まるのかということ。
楽屋で「あいつ可哀想やな。次の相方を何とか見つけたらなアカンなぁ」
と、思わせる為に自己演出でそんなことをやっていた芸人もいたようである。
しかし、らん子は違った。
というか、行く場所もなかったのである。

そんな時、突然ぽん子が楽屋に現れた。
全身ズブ濡れの状態であった。
「ぽん子さん!どないしたの、その格好?」
ぽん子は、楽屋に来るなり、泣き崩れた。

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