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萩原芳樹のブログ
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戻って来たぽん子と、コンビで漫才を始めることを決意したらん子。
そんな矢先に、マネ-ジャ-の米沢が「仕事や」と、やって来た。

聞けば鳥取県の温泉ホテルに一ヶ月滞在してほしいとのこと。
「小さい温泉ホテルやけど、一応宴会場もあってな、女芸人をほしがっているのや」
らん子は嫌な予感がした。
「女芸人ほしがるて、そょっとして酒の相手もさせようという訳やないんでしょうね」
「それは行ってみんことにはわからんわ」
米沢は、顔を背けながら答えた。
自分の言葉に偽りがある時のクセであった。

女芸人が地方の余興先でホステスのように客の相手をさせられることはあるとは聞いていたし、キャバレ-歌手時代に客のテ-ブルによくつかされていたらん子は直感で察したのである。

「米沢さん、二人でここの舞台に立たせてもらうというのは?」
ぽん子が切り出したが、
「支配人にかけ合ってみてもええけど、まぁ無理やね」
と、そっけない返事が返って来た。

確かに「こまどり娘」は、東京に行ってしまったぴん子の話芸が中心。
そのぴん子抜きでは、笑楽座の舞台に上がることは難しいという判断である。
現に、らん子が一人で舞台に立ち、ポロポロになった時点で支配人からの信頼は無くなっていた。

「ぽん子、その温泉に行こう!そこで芸を磨いてまた戻って来たらええやんか」
らん子の強い説得に、ぽん子は渋々納得した。

芸人の余興には、いろんな種類の仕事がある。
身近なパ-ティに呼ばれる余興が多いが、昭和43年当時といえば、「大会」と呼ばれる余興があった。
寄席芸人がツア-のようにバスで移動し、約一週間かけて、各地のヘルスセンタ-等を転々とする余興で、これが一番ギャラもよかったようである。

それから今回のように地方の温泉ホテルに一ヶ月ほど滞在する余興。
この余興が芸人にとっては一番地力がつくと言われている。
というのも、客こそ変われども宴会場の係の人達は一ヶ月も同じ芸人のネタを見せられる。
そこで、向上心のある芸人は、そんな従業員を笑わせようと、新ネタ作りに励むのである。

今は亡き「Mrボ-ルド」さんは、別府の杉の井ホテルで、あの芸を生み出されたらしい。
あの芸というのは、客席から花を投げてもらい、その花がツルピカのボ-ルドさんの頭にピタリとくっつくという芸である。
みやげもの売り場で、お客さんがキ-ホルダ-を選んでいた横で、ショ-を終えたボ-ルドさんが、キ-ホルダ-の吸盤を頭にくっつけたところ、爆笑になったので、それを舞台でも取り上げたという逸話である。

らん子とぽん子が、鳥取県の温泉ホテルに行く決意をした時のことであった。
何やら楽屋口が騒々しい。
ぴん子が帰って来たというのである。


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