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萩原芳樹のブログ
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「松の木、甚兵衛」は、その姿を新聞に変えられていた。

早朝、新聞配達の少年の手によって、とある一軒家に。
甚兵衛は「ご苦労様」と、一声かけたかった。

「エロ本」iされた時は、人間は最低の生き物だと思っていた。
しかし、こんな早朝から働く少年がいる。
人間社会も様々だなぁと改めて実感した。

甚兵衛の新聞は、その家の朝食の主人公でもあった。
食事の支度をしている奥さんが、
「あなた、その新聞見て。また物価が上がるらしいわよ。不景気も続くらしいし。この家のロ-ンで精一杯なのに」
朝から凄い勢いで、甚兵衛を指指して怒っていた。

それに対し主人は新聞を開くと、
「おおっ!阪神久しぶりに勝ってるやないか。昨夜飲みに行くの断ってナイタ-見るべきやった」と。

「あんた!阪神が勝ったってウチの暮らしは全然よくならないのよ!」
「けど、阪神がなぁ・・・」
「どうでもいいの!阪神なんか」

朝から甚兵衛の新聞をはさんでケンカしている夫婦を見て、甚兵衛は思った。
「生き物の中で、人間のツガイが一番仲が悪いのではないか」と。

その後、甚兵衛達古新聞は、束にされて縛られた。
そして「毎度お馴染みの・・・」というちり紙交換の声と共に、ちり紙交換に出された。

甚兵衛達と交換してトイレットペ-パ-を手にした奥さんは、満足げだった。
しかし、甚兵衛は交換されたトイレットペ-パ-を見て思った。

「紙にされた者は、トイレットペ-パ-にされたら、それがおしまいよ」
山の婆ちゃんに、よくそう聞かされたことを思い出した。
「あいつ等の運命も、もう終わりか」
そう思って、トイレットペ-パ-達を、哀れな目で見送った。

この時、自分もまさかすぐに同じ運命になるとは想像もしていなかったのである。
        ~つづく~


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