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萩原芳樹のブログ
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「松の木、甚兵衛」は、ついにトイレットペ-パ-に、その姿を変えられてしまった。
幼い頃から、大好きだった山の婆ちゃんに「木が紙にされたら、それが最後だということよ」
と、よく教えられたので、覚悟は出来ていた。

甚兵衛のトイレットペ-パ-は、山の手の高級住宅の家に買われて行った。
納戸に積み上げられたトイレットペ-パ-の山の一角となり、自分の最期を待つ甚兵衛。

そして、ついに最後の時が来た。
見るからに上品な奥さんが、甚兵衛をトイレに運んで行ってセットした。

「ああ、僕の一生もこれで終わりか・・・」と、思っていた時である。
「甚兵衛!甚兵衛じゃないか」
どこかから、声が聞こえて来た。
「俺だよ。杉の木弥太郎だよ。覚えているだろう?ホラ、故郷の山で一緒だった・・・」
「杉の木弥太郎君?」
甚兵衛は、その声の主を探した。

「ここだよ、ここ」
なんと、杉の木弥太郎は、トイレの柱になっていた。

「弥太郎君・・・こんな所に。立派な家の大黒柱になったのではなかったの?」
「ウウン、最初はそのつもりだったらしいけど、僕よりももっと立派な木があって、そいつを大黒柱に使うことになり、僕はこのザマさ」
「そうだったのか・・・」
「僕さ、人間社会でもっとチヤホヤされると勝手に思っていたけど、結局は人間のお尻ばかり見せられてる毎日。山を出て、人間のお尻ばかりを見せられて一生終わるのかと思ったら、情けなくってね。こんなことが、あと何年続くんだろうね。甚兵衛くん、君は今まで何してたの?」

甚兵衛は、杉の木弥太郎に、これまでのことを全て話した。
「エロ本」になったこと。
新聞になって、人間のことを、もっと深く知ったこと等々。

「へぇ~。甚兵衛くんがうらやましいなぁ。そんな風に人間社会を色々と見て来られて」
「そうかなぁ。でも、僕はもうおしまいだよ。こんなことなら、山で一生素朴な松の木でいた方が良かったなぁと思う時もあるよ」
「いや違う!君は人間社会の裏を散々見れて来られた。うらやましい限りだよ。僕なんかな、こうやってずと人間のお尻ばっかりを見せられて・・・」

そんな会話を続いているうちに、足音が近付いて来た。
「杉の木弥太郎くん、もう、お別れだね」
「甚兵衛くん・・・」
「弥太郎くん、君の言うように僕はやっぱり幸せだったのかも知れない。松の一生としては短かったけどね」

トイレのドアが開いた。
甚兵衛と弥太郎との会話は、そこで終わった。

トイレに入って来た主が、用をたしていた時、少し柱がきしんだような気がしたのは、気のせいだったのだろうか・・・。
       ~完~

今から30年も昔に構想した物語です。
当時、プロの作家でもなかった私が、何を考えてこんな物語を作ってしまったのでしょうかね・・・。
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