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萩原芳樹のブログ
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そのライオンは「獅子の助」と名付けられていた。
ここの動物園に連れて来られて3年になる。

「退屈だなぁ。毎日狭いオリの中で何もすることがない」
ライオンは故郷のサバンナを思い出していた。

サバンナの広い大地で毎日走り回った日々が懐かしい。
しかし、エサを手に入れることが苦手で、いつも妹ライオンが仕留めたエサのお裾分けにあずかっていた。

「獅子の助」は、ドン臭い上、気弱なライオンなのである。
そのドン臭さゆえ、人間の簡単な罠にひっかかってしまった。

日本に連れて来られて、サ-カス団に入れられた。
でも気弱なので、どうしても「火の輪くぐり」をする勇気がない。

毎日ムチでしばかれたが、全くダメ状態。
困り果てたサ-カス団は、「獅子の助」を動物園に売った。

「何が『獅子の助』だよ。俺は日本生まれじゃないぞ。勝手にこんな名前をつけやがって」
内心ムカつくことだらけだったが、暴れでもしたら、ひどい目にあうことはわかっているので、オリの中でおとなしくしているしかなかった。

「恋がしたいなぁ」
故郷のサバンナには、片思いのメスライオンがいた。
しかし、告白や行動に出る勇気もなかった。
夜、寝ているところを襲おうとまで思ったことがあった。
が、恋しているメスライオンは大きくて、抵抗されるどころか、逆に噛み殺されるのでは・・・という恐怖心から何もできなかった。
「獅子の助」は童貞であった。
「このままオリの中で、しかも童貞で死んで行くのか・・・」
「獅子の助」は涙しながら眠る日も多かった。

ライオンのオリの向かいに、象のオリがあった。
つい先日、巨大なメスのアフリカ象が連れて来られていた。
毎日、象の姿を見て暮らす日々。
そのうち、メスの象に自分が惚れてしまっていることに気付いた。

「あの象と、一緒のオリにしてもらえないかなぁ」
獅子の助は、無理とはわかっていても、メス象と一緒に暮らす夢を見始めていた。

「ライオンと象が恋をして、赤ちゃんが生まれる。これは恐ろしい新種の猛獣が誕生するぞ。そうそう、名前は『ライオンだぞう』だ。うん、これは強そうだ」


*もう20年以上昔に書いた物語です。さて、この後、ライオンの獅子の助は童貞とサヨナラする日がやって来ます。続きはまた後程。



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