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萩原芳樹のブログ
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新喜劇の「井上竜夫」さんに関しての続きです。

私が中学2年の時、まるで「ダメ出し」のような失礼な手紙を書いては、井上さんから「そういうけど、誰もがギャグやってたら、芝居は成立しない」という内容のやりとりが、まるで文通のように続きました。

今の新喜劇はよく知りませんが、以前の新喜劇は「懸命に役作りに励み、芝居に専念しよう」という役者さんが、それだけ多かったのでしょうね。

井上竜夫さんは、新喜劇の名脇役として貴重な存在でした。
しかし、同じ「老け役」の「谷しげる」さんから、「漫才コンビを組まないか?」と、誘われて一時新喜劇から離脱されます。

当時、新喜劇よりも漫才の方が収入も良く、何よりも「漫才は二人が主役」です。
「ザ・どっきんぐ」というコンビを結成され、花月の舞台で若々しい漫才に転向されていました。

そんな頃でした。
私は「B&B」として花月にデビュ-。
うめだ花月で一緒の出番になる機会がありました。
丁度舞台の袖に、私と井上さんの二人きりになった瞬間がありました。

「井上さん、姫路の萩原という奴、覚えてはりますか?」と、私が聞くと、
「ああ、ふざけた手紙をようくれてた中学生や。君、萩原君の友達か?」
「いえ、実は僕・・・その萩原なんです」と。
驚いた井上さん、「君・・・芸人になったんか」と。

それから、出番が一緒になる度に「お茶行こうか」と、井上さんと何かとお話する機会も増えました。

そして、私が作家となり、井上さんのセリフを書かせていただくことに。
何か不思議な気持ちでした。

その「どっきんぐ」というコンビですが、井上さんが病に倒れ、相方は吉本をやめて行き、井上さんは病床で先行き不安に悩まれる時期があったようです。

そんな時、作家の「檀上茂」さんが、お見舞いに現れ、
「また、新喜劇の老け役に戻ってくれ」と。
そして「今、ABCで放送している『あっちこっち丁稚』を見てくれ。舞台の下手に隣りの家からの木戸があるやろ?あれは、オマエが復帰したら、隣りの隠居の役で出て来る木戸や。もう準備してるんやで」
そんな優しい言葉に、井上さんは涙して、新喜劇に復帰されたようです。

最近余りお会いするチャンスも少なくなってしまった井上竜夫さん。
でも「竜爺」の顔を見たら、中学時代を懐かしく思い出してしまうのです。
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