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萩原芳樹のブログ
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吉本の東京支社長からの「二つの頼み」は、こういう内容でした。

「まず一つ目やけど、君また漫才やらへんか?今はマンザイブ-ムやし、誰か相方を見つけて来たら、絶対に売れるで」と。

私は丁重にお断りを。
芸人を辞めて、5年の歳月が流れていました。
今更芸人に戻るなんて考えてもみなかったこと。
それに、姫路の暮らしの中で、常に私は「芸人ノリ」やら「芸人オ-ラ」を消そうと努力して来た人間です。

「そうか、仕方ないな。勿体ないチャンスやのに。もう一つの頼みなんやけどな、漫才のことを全くわかってない新人の女の子コンビがいてるのやけど、君面倒見てくれへんか?」と。

その二人は「クルミミルク」という女性コンビで、二人とも歌手に憧れて「スク-ルメイツ」の出身。
ルックスは、歌手を目指していただけのことはあって、そこそこなのですが、笑いの作り方を知らないようでした。

「どうや?君はド素人の洋七君を一人前にした男や。引き受けてくれるか?」と。
「承知しました」
その件に関しては、すんなりOKさせてもらいました。

それからというもの、「クルミミルク」に私は漫才の特訓を開始。
週に二回、二時間の約束で漫才を指導しました。
報酬も吉本さんから、それなりにいただいていたので、私も真剣に指導を。
まるで家庭教師ですよね。

でも、漫才の基本を教えても、なかなか二人は上達しませんでした。
そして、ある日のこと私は二人に、こんな宿題を出しました。

「もう完全コピ-しかないな。オマエ等来週までに大阪に戻って、『こずえみどり』さんの漫才を完全コピ-して来い。ええか、セリフ一言一句そのままで、喋りの抑揚や間も、テ-プに撮って完全コピ-して来るのや」

そして、翌週。
二人は「こずうみどり」さんの完全コピ-漫才を私の前で披露してくれました。
真似ですから、完璧な漫才になっていました。

その日、支社長から「萩原君、クルミミルクの漫才ボチボチ行けそうか?」と。
「いやぁ、まだまだです」と、答えると、
「とりあえず一度見せてくれ」。

二人は事務所で、「こずえみどり」さんの完全コピ-ネタを披露。
事務所は大爆笑となりました。
その頃「こずえみどり」さんは吉本に移籍して間もなく、ブレイク寸前の状態。東京の事務所では誰一人「こずえみどり」さんの漫才を知らなかったのです。

「凄いわ!急に漫才上手になったわね」と、事務所の皆さんは絶賛。
「ようし!早速二人のTV出演を決めよう!」と、支社長は電話を。
「もしもし・・・『クルミミルク』に新ネタが出来て、これが面白いのですわ。一度使ってもらえませんか」

「あのぉ、木村さん・・・今の二人の漫才は『こずえみどり』さんの完全コピ-ですよ」と、申し上げたのですが、
「ええがな。東京では『こずえみどり』誰も知らんから」

こうして、「クルミミルク」は、「こずえみどり」さんの完全コピ-で演芸番組に出演してしまったのでした。

私としては罪の意識でいっぱい。
でも、このことが私を「お笑い作家」として大きく後押ししてくれる結果になりました。


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